呼吸のように・・・

俳句のエッセー

鹿と人と

奈良には、鹿と人が共に過ごす、不思議な空間があります。
鹿は、人に慣れてはいても野生です。
糞も転がっているし、尿も匂います。
しかも重要文化財のある空間で、鹿は奔放に過ごしています。
不衛生だと怒る人は、一人もないのでしょう。
もちろん、最低限の注意は払われているでしょうが、
お互い寛大に許し合っている不思議な空間です。
二月堂から眺めているとき、鹿が一頭走り出しました。
行く先は、三四人の観光客のところ、
餌を手にしているのが分かったようです。
一枚、煎餅を口にして、お辞儀をします。
また口にして、お辞儀をします。
偶然かと思いましたが、違うようです。
必ず、食べてからお辞儀をしているようでした。
あれは、人の中で生きる鹿が、自然に身につけたものでしょうか?
野生の鹿の習性を知らないので分かりませんが、
鹿も「ありがとう」と言っているように思えました。
とてもいい子たちです。
私たちは、野生動物と共生できそうですね。
時々、服を引っ張られたりしますが、
赦し合う寛大さが、この空間を維持しているのでしょう。
何かを学べそうに思いました。
ここには、なにか良い知恵があるように感じ、探してみたくなりました。