呼吸のように・・・

俳句のエッセー

郭公(かっこう)

金沢市にチカモリ遺跡というのがあって、
縄文時代の環状木柱列が復元されて、史跡公園になっている。

ある夏に、市史編纂のための遺物の写真撮りを行った。

最後に、環状木柱列を撮影することになったのだが、
大きさを確認するために、人を入れて撮ることになった。
それで、私がモデルとなり、両手を広げて真ん中に立ち、写真に収まった。

郭公がしきりに鳴く中、撮影を終えて、充実感に浸ったのだった。

そして、数年が経ち、年度末に行われる遺跡発掘速報会。

何といっても縄文の研究者は多く、縄文遺跡の発表には熱が入る。
私も一応、縄文時代に関わった経験があるので、熱く聞き入る。
遺跡の報告がなされ、いよいよ発掘担当者の見解がクライマックスに達したところで、
スライドに、女性が両手を広げて立っている姿が大写しにされた。
ん?どこかで見たような…私だった。

皆、大真面目に聞き入っている中で、一人、照れながらうつむき、
居心地悪そうに、そわそわしている私。

バカみたいだ…

そう思いつつも、その写真の人物がここに居ることを、
誰か気付きやしないかと、ひやひやして、汗をかいた。

発表会が終わって、すぐに会場を後にした。
まだ、昂揚した感じがあった。
市史に載ったのだから、これからも写真は使われるだろう。

写真の私は、若いままで…と、くだらないことを考えたりして、
バカみたいだ…
と、一人で苦笑いした。