呼吸のように・・・

俳句のエッセー

布留

布留の里春菜を摘みて時忘る   細見綾子

 

「布留」は、奈良県天理市にある地名です。

石上神宮があります。

鶏が、たくさん放し飼いにされていましたが、

調べますと「神使」と言うのだそうで、

ただの「鶏」ではありませんでした。

他には、「七支刀」が有名です。

しかし、私が思い出すのは、「布留遺跡」です。

とは言いますが、遺跡は訪ねたことはありません。

ただ、布留式土器が有名ですので、良く知っています。

布留式土器の甕は、器壁が薄くて、口縁がくの字型に

きれいに整えられた、古墳時代の美しい土器です。

この布留に似せて作られた土器は、

北陸にもたくさん出土しています。が、

本物の「布留」は、まず、ありません。

模倣して流通したのでしょう。

どれも似せてはいますが、本物ほど整えられた形ではありません。

土の色も違っています。

本物の布留が出ないか、いつも、そう願っていましたが、

やはり、ありませんでした。

布留、と聞くと、つい思い出してしまいました。

布留は、神の地。

春菜を摘むとは、万葉集を思い浮かべます。

やはり、ロマンがいっぱいの「布留」だと思います。