呼吸のように・・・

俳句のエッセー

斑猫(はんみょう)

斑猫は、「道をしえ」「みちしるべ」ともいい、夏の季語です。
2センチ程度の小さな虫で、色鮮やかな甲虫。
近づくと飛び、また近づくと飛ぶ。
その様が道を教えているようだと、「道をしえ」の名があるそうです。

遺跡を歩くことが好きなので、よく出かけます。
発掘中の土の上を歩くことはできませんが、
埋め戻された遺跡や、整備されて公園になっている遺跡など、
まったくの自然とはちがった趣があります。
この下の地層には、古代人の活動した痕跡がある。
そう考えると、なんだか心が弾みます。

夏は、それなりに草を刈っていても、生い茂ってしまいます。
遺跡も、背の低い草に覆われて、
踏み出すのをためらってしまうのは、会いたくない生物がいそうだからです。
そろそろと歩を進める私の足元に、斑猫が飛びました。
あ、と思い、また歩みだすと、また飛びます。
それは、あたかも私を古の世界へ導いているかのようでした。
どこへ連れて行ってくれるのかな…
そんなことを思いつつ、斑猫の後ろを歩んでいきました。

小さな道しるべ。
斑猫でなくとも、何か道しるべを求める地上の歩みです。
道しるべがなければ、歩みとおす自信がありません。
人の不安を払しょくしてくれる導き手を、
どうぞこの世界に与えていただきたく、願い求めたく思います。