呼吸のように・・・

俳句のエッセー

死んだら負け

金沢句会の思い出。

時は八月か九月。お盆休みの句が散見された句会でのこと。

「新盆やはなやぐ寡婦の薄化粧」

こんな句が出されました。

気になる作者は、宮崎修先生。

御主人が亡くなり、悲しみに暮れている、

時はとうに過ぎてしまい、新盆には生気を取り戻した

未亡人の姿がそこにありました。

女は、強い。

まるで、憑物がとれたかのように、さっぱりと、

第二の人生を謳歌しようという構えです。

男性陣から、どこからともなく声が上がりました。

「死んだら、負けや!」

「そうや、負けや!」

そうや、そうやの連呼です。

思わぬノリに、泊先生も戸惑い気味に見えましたが、

「では、つぎ」

と冷静に進行されました。

そのころ、既に癌を患っていらした泊先生は、

どのようにお聞きになったのでしょうか。

今は、もう、そのほとんどの方が「負け組」に入られましたが、

今頃は天国で、「負けもそれほど悪くない」と、

思っておられるかもしれません。

そう思うと、なんだか楽しそうで、

あのときの笑顔が、やけに身に沁みて、

胸が熱くなります。