呼吸のように・・・

俳句のエッセー

残る虫

虫がしきりに鳴いていたころに比べ、ずいぶん静かになったようです。
残る虫とは、今頃の虫の音を言うのでしょう。
盛りを過ぎた虫たちの儚い声を「残る虫」という季語で表します。
途切れては、また、鳴き出す。
虫の声は重なりを思わせず、鳴いている虫を数えられそうです。
また、途切れました。
そう言えば、寒くなったと思う夜。
秋も深まったと感じます。
ふと、筆をとり、いたずらに文字を書いてみます。
書の上達には、こうして毎日、少しずつ練習するのがいいのです。
あれこれ、丁寧に書いたり、適当に書きなぐったりしながら、
「残る虫」の夜を過ごします。
夜も更けて、疲れを感じた頃、
また、足元が寒く感じる頃でもあります。
温かいお風呂が恋しいと思うとは、寒くなってきた証です。
虫が、また鳴き出し、筆を置きます。
今日の文字を見て、あれこれ思います。
練習した紙は捨ててしまいますが、上達した腕は残ります。
練習が上手な文字を生みます。
そう思い、何事も練習、練習と心に言い聞かせて、
また、一日の終わりには、筆をとることと思います。
虫の音を聞きながらの練習は、もう終わりかもしれませんね。