呼吸のように・・・

俳句のエッセー

蝉の声

明くるより一木の蟬声を和し   田島 和生

これは、よくわかる風景です。
朝日が差し込むやいなや、蝉は一斉に声を上げるのです。
朝になると、いざとばかりに鳴きだす蟬たちに、
自然の不思議を思ったものです。
今では、住宅事情がいいので、防音もそれなりです。
物音すべてに距離感がありますが、かつては、
外の音に臨場感がありました。
夏の暑い日の始まり、朝、蝉は朝日を合図に鳴きだすのを
寝ながら聞いていたのでした。
そういえば、近頃、朝蝉は聞かなくなりました。
朝を教えてくれた蟬たちは、住宅事情とは別に、
何処かへ行ってしまったようです。
季節は秋になりました。
秋の蝉も、まだ、元気に虫たちと鳴いています。
しかし、その数は、間違いなく減っています。
合唱より独唱という感じです。
蝉が声を和すのは、また、来年ということになります。