呼吸のように・・・

俳句のエッセー

盆栽の松

「盆栽の松」(小林恵子編著)は、
宣教師アイリン・ライザー先生の小説です。
アイリンは1934年に来日し、大戦を挟んで34年間、
金沢にてキリスト教教育に従事なさいました。

その当時の日本の生活や価値観が、見事に表現されています。
決して古さを感じさせず、日本人の本質は、
当時からあまり変わってはいないのではないか、と感じるほど、
現在に通じるものがありました。
宗教観や男女観、風習やしきたりなど、
登場人物に語らせるアイリンの言葉は、
今を生きる私にも、深く沁みいる言葉でした。

戦後、私たちは変わったのでしょうか?
男女云々…と声高に叫ばれている事実は、
それらが実現していないことをあらわしています。
生活は豊かになりました。活動は自由になりました。
けれども、心は豊かでしょうか?自由でしょうか?
私たちは、何に価値を見出しているのでしょうか?

アイリンは、因習を容認し甘んじている私たちの心のゆがみを、
鋭く見抜いて、考えるように訴えかけます。
私たちが、最も必要としているものはなんでしょうか。
この重いテーマを、今も尚、問うているのです。