子どもの頃、土筆をいっぱい摘んできた。
それを料理してもらうのだけれど、いつも決まって少なかった。
これではいけないと、次にはもっとたくさん摘んできたが、
それでも、一口程度しかなかった思い出がある。
土筆は、調理すると嵩が減るんだ…
しかも、実は、美味しいと思ったことがない。
自分で摘んできて、ほとんど口にしない。
それに関して、大人になって初めて知ったことがある。
料理する時、土筆の袴を取り、頭もとり除けていたのだが、
その頭が美味しいのだそうだ。
「そうでしょう。みんな知らないんですよね。
そのあたまが、美味しいんですよ。
あたまを取ったら、土筆料理じゃないですよね。」
なるほど、美味しくない道理である。
しかも、量も少なくなるのは当然だ。
当たり前のことを知らなかった、冷や汗ものの話しの一つである。
美味しい土筆料理を食べたいけれど、
無邪気に土筆を採って来てくれる「私」は、もう居ないので、
まだ、美味しい土筆料理を知らないでいる。
世の中、知らないことが多いのである。