呼吸のように・・・

俳句のエッセー

春の水

山女の目金環嵌り春の水   沢木欣一

(やまめのめ きんかんはまり はるのみず)

 

山女はサクラマスの稚魚で、体長はせいぜい20㎝程度。

大きい魚ではありません。

その山女が春の水に目を輝かせていました。

春の水、つまり春の川は、

山の雪解水に嵩を増し、澄み切っていたことでしょう。

その水の中にあって、春の日を受ける山女の目は、

まるで指輪か何かのように輝き、山女の顔に

嵌っていたようだと詠みました。

観察力の細やかさと、感性が光る、

瑞々しい写生句です。

昭和42年、欣一48歳の作品です。