呼吸のように・・・

俳句のエッセー

春の雪

春雪の暫く降るや海の上   前田普羅

(しゅんせつの しばらくふるや うみのうえ)

 

前田普羅。

先日から、春の雪となっています。

思わず積もってしまったのには、驚きました。

春になってからの寒さは身に堪えます。

掲句、淡い春の雪を詠っています。

海上に降る雪は、海に触れるか否かというところで、

消えてしまいます。

しばらく降って、また、日差しが来ます。

日が差せば、それは春そのもの。

暖かで、まぶしい春そのものです。

その寒暖の差、晴天と雪の交錯が、

早春が織りなす日々の景色でしょう。

海は、有磯海。

日本海に降る春の雪は、

風の冷たさを表わしているようです。

上五の「春雪の」を「春の雪」としなかったのは、

座五の「の」を挟んだ体言とサンドイッチになり、

面白くなかったからでしょう。

言葉と語順に推敲を重ね、良く練られた作品ではないでしょうか。