呼吸のように・・・

俳句のエッセー

栗の花

眉濃ゆき妻の子太郎栗の花   沢木欣一

(まゆこゆき つまのこたろう くりのはな)

 

昭和25年作

「妻の子太郎」と書かれていますが、

妻(細見綾子先生)の連れ子ではありません。

れっきとした欣一、綾子の長男です。

自身が父でもあるというのに、

「妻の子」と記し、その子に妻の姿を重ねているのでしょうか。

妻に似た風貌であり、また、

母の愛情を一心に受けている子を、

そのように言い表したのかもしれません。

ちょっと突き放したように言い表し、

親子の姿を客観的に捉えました。

季語の「栗の花」が動きません。

春の日の中にあって、母と子の楽しそうな姿を見つめる

欣一も、また、春の日のように二人を包み込む、

父親そのもののまなざしだったのだと想像しました。