呼吸のように・・・

俳句のエッセー

黴(かび)

蒸し暑く、うっとうしい季節です。
湿気が多いと黴が繁殖します。
特にキッチンの水回りが顕著で、
栄養分が豊富ですから、黴も大喜びで繁殖してしまいます。
そして、「黴」は、夏の季語です。
このような季語もあるのですね。

先日の「雉」アーモンド句会にて取り上げた中の一句です。

懐紙もてバイブルの黴ぬぐふとは ,,,,,,,, 蛇笏
アーモンド句会には、クリスチャンが多く出席くださっておりますので、
上記の俳句を取り上げてみました。
二つの思いが感じられます。
一つは「懐紙」です。
詩歌を書いたり、お菓子を取るときに用いたり、盃を拭ったりするその懐紙で、
こともあろうに黴を拭うことになろうとは、という情けない思いです。
もう一つは、バイブルに黴が生えてしまったという、衝撃的な事実です。
黴が生えるくらいですから、上等な革の表紙を思わせます。
その大切なバイブルに黴が生えてしまうほど遠ざかっていたのか、
扱いが悪かったことへの自責の念か、後悔の思いが感じられます。
あるいは、このような場面を目撃したのかもしれませんね。
そうだとしたら、目も当てられないことだったかもしれません。

私の聖書は、革の表紙ではないので、黴の心配はなさそうです。
この聖書に黴が生えるときは、よほどのことと思って間違いないでしょう。
ともあれ、意外なところにも黴が生えてしまう季節。
気を付けるに越したことはありませんね。