呼吸のように・・・

俳句のエッセー

風船

子供の頃、お祭りで大きくて色のたくさん入った
風船が欲しくて、欲しくて…
母に祖母にねだったけれど、絶対買ってくれなかった。
それが、四歳の時はしかにかかって、
お祭りの日に寝込んでいた。
すると、祖母が、
あの風船を買ってきてくれて、
目の前でポンポンついて、
「ほら」と見せてくれた。
欲しがっていた風船を買ってきたから、
早く元気になってね、という思いだったろう。

で、私は、子供ながらに、
私の病気は重いのだな…と思ったのだった。
後で聞くと、本当に大変な状態だったそうで、
死ななくて良かった、と母は言っていた。
苦しかった覚えはなくて、
窓を開けて曳山を見せてくれたり、
家族がうろうろ部屋へ出たり入ったりしていた覚えはあるけれど…

で、風船もそれきりで、その後ねだっても、
やっぱり買ってはくれなかった。
あの時の風船をつく祖母を、今でもよく覚えている。