呼吸のように・・・

俳句のエッセー

焼藷

以前勤めていた職場でのこと。
ある女性に、夕方しきりに電話がかかって来ていました。
「お母さん、何時に帰る?」
まだ小学校低学年の二人の息子さんからでした。
「4時に仕事が終わるから…それから買い物をして…」
と答えていて、ふと心配になり、
「何?何かあったの?」
「ううん、そうじゃなくて…何時に帰る?」
はっきり言わないのだそうです。
結局、彼女は買い物もせず、家に直行することにしたようでした。
 翌日。
昨日の出来事を報告してくれました。
大急ぎで帰ってみたら、テーブルの上に焼芋がおいてあったのだそうです。
電話がかかってきたとき、焼芋の屋台が家の近くまで来ていて、
幼い兄弟は、お母さんのために焼芋を買おうと話しあいました。
おこずかいを出し合って、何とか一本分のお金を用意し、
それから、お母さんは何時に帰るのか確認してきたようです。
遅いようなら、ほかほかの焼芋をあげることができません。
それで、何時に帰るのか、早く帰ってきてほしいと電話してきていたのです。
母は感動し、三人で食べようと提案したのですが、
これはお母さんのために買ったんだから、と
兄弟は、お母さんが焼芋を食べるのを、じっと見つめていたということでした。

二人とも、おそらくいい青年に成長していることでしょう。
お母さんは楽しみですね。