呼吸のように・・・

俳句のエッセー

春田

こんな小さな町に、ヤマダデンキが進出してきた。
こんなところで商売になるのかと思うが、消費者としては有難いことである。
これで、はるばる車を走らせる必要がなくなったというものだ。

これまでは、田んぼの真ん中を通って、近隣の大型店まで出かけて行ったのだが、
経験のある方は分かると思う。
田舎道というのは、真っ直ぐに走っていないのである。

一本道だから迷うはずはないが、
目的地に向かって走っていたはずが、途中からカーブして、
どんどん左にそれて行く、ことなど珍しくない。
「こっちに行きたくなーい!」
と叫んでいても、道がないのだから仕方がない。

田んぼの中だから見晴らしも良く、分かりやすい、
ということは断じてなく、
どこを見ても同じ景色だから、方向を失ってしまうことなどたやすい。

そこで登場するのが、カーナビである。

近隣のヤマダデンキへ向かうのに、
知り合いは、不慣れな田舎道を行かねばならないため、カーナビに頼ることにした。

よくわからないが、春田を抜けて、田舎の集落を走らされ、
こんなに遠かったかな、というほど走ったところで、
「目的地です」と告げられた。

そこは、どう見ても普通の家のたたずまいだった。
が、よく見ると、

「山田電気」

という看板があがっていた。
カーナビは正しかった。が、ヤマダデンキ違いだった。

大笑いして引き返したそうである。

嘘のようなホントの笑い話である。