呼吸のように・・・

俳句のエッセー

春の虹

新年度が始まると、いろいろな組織が新しくなり、
何かと会議らしきものに出席しなければならなくなる。

私は、特に何か役が回ってくる立場ではないが、
枯れ木も山の賑わいで、人数合わせによく声がかかる。

ある日、教会の行事に出席していて、
突然、土砂降りの雨になった。

教会堂は、雨音が響き渡り、
牧師の説教が、思わず途切れたほどだった。

しかし、帰る頃には嘘のように青空が広がり、
雨後のすがすがしい空気のなか、
牧師の運転する車で帰路についた。

見晴らしのいい田舎道を行くと、
大きな虹が、欠けもせずにかかっているのを発見した。

「約束の虹だ」、誰かが言った。

ノアの箱舟のあと、
神は、二度と再び、このようなことはしないと約束して下さった。
人間を滅ぼすようなことはしない、というのである。

小さな車は、ノアの箱舟のように感じられた。

隣町の教会をでて、自分たちの教会へ帰る道すがら、
約束の虹が出ていたのだ。
箱舟の私たちは、守られた存在だと宣言されたようだった。

しかし、これは、教会のことだけではなく、
人類への約束なのである。

未来への明るい兆し。
そのような予感と共に、車は進む。

頼りなげに見えたとしても、
神の掌の中と信じて歩み続ける。

今も試練の中にある方々へ、
この虹の意味が届きますように、
虹が届きますように…