今年一月から、姉が同人となり、
新同人競詠のテーマを「能登」に決めて、
昨年から準備していたようです。
誰でもそうですが、
最後の一句、二句が納得できず、
締切が迫る今、ぎりぎりまで推敲しています。
能登へ出かけるようになったきっかけは、
沢木欣一先生の「能登塩田」の俳句によります。
実際、塩田を目にし、言いようのない魅力に惹かれました。
こんな生活があったのか、という驚きと解放感でした。
実際は、それより何倍もの苦労があり、それが詠まれていたわけですが、
人の社会から置いていかれたようなことに、実は
大きな価値があるように思い、発見と驚きの念を抱きました。
また、私は連山を見て育ったので、海は憧れの存在でした。
水平線を望む、その解放感、期待感は、
幼いころから今も変わりません。
幼いころ、父が連れて行ってくれた海は、
能登の入り口の「柴垣」だと姉が教えてくれて、
以来、父に会うような気持で、柴垣へも出かけています。
ただ、海を詠むのは簡単ではありません。
海に住む者であれば生活もありますが、
海を見に行く観光気分では、俳句にはなりにくいと言えます。
それならば、まだ山の方が変化があっていいでしょう。
その海をテーマに、姉は今、四苦八苦しているというわけです。
海の生活を詠んだ句集『大磯』(おいそ)に出会いました。
著者は、日守むめ(にっか・むめ)さん。
もう鬼籍に入られましたが、私は今、初めてこの句集を手にし、
その海の生活の句に、惹かれています。
こんな句を詠んでみたい、そう思います。
姉の参考になる句は、
口能登の泥黒黒と蓮を掘る
荒海に時雨竜巻三筋立つ
句碑開く海より能登の荒時雨
月のぼり艀の舸子の外寝見ゆ
鰤網や日の出の潮のむらさきに
波が波押してしぶけり涅槃西風
荒布刈り鎌で大蛸捕へたり
このような句でしょうか。
一歩踏み込んだ視点で詠まれており、
上滑りでなく、飽きがこない俳句です。
真実の句は、すたれることがないのでしょう。
いい勉強になりました。
むめさん、有難うございました。