翅わつててんたう虫の飛びいづる 高野 素十
てんとう虫が葉の裏につるんで、ころころと動き回っていました。
この様子を詠んだことがあります。
私がよく見かけるのは、ひとつ星のてんとう虫です。
確かに、飛び立つとき、まあるい一つ星を割って翅をひろげ、
ブーンと一気に飛んで行ってしまいます。
ああ……という思いを残して、てんとう虫は失せてしまいました。
子供のころは、このような出来事に、いつも接していました。
大人になって、この句を読むと、
胸の奥がちくりと熱くなるような、懐かしさがあります。
翅わつててんたう虫の飛びいづる…
今年もこのような場面を目にすることができるでしょうか?
大人とは忙しくて、余裕のないものだと思います。
何でもない自然に埋没するひとときは、
私にとって、とても豊かな時間です。