呼吸のように・・・

俳句のエッセー

雪しまき

雪が激しく降り、風も吹きすさぶ、
寒々しい景色です。

金沢駅が新しくなる前は、
駅舎全体に今のような壁はなく、屋根は、ホームの上だけ。
雨や雪が横殴りに降る日は、容赦なくホームに列車を待つ乗客に吹きつけました。
そのように寒波が訪れた日は、ダイヤに乱れが生じ、
ホームには長蛇の列ができるのです。

列車に遅れが出た時は特急列車を先に走らせるようでした。
金沢のような大きい駅では、特急列車の案内が優先され、
普通列車は、
「今、しばらくお待ちください」
こればかりアナウンスされます。
いつ来るかも知れない列車を、雪に耐え、寒さに耐えて、
長蛇の列の中に待ち続けるのは実につらいことです。
それでも列から離れてしまえば、列車に乗れないかもしれず、
離れるわけにはいきません。耐えるしかありませんでした。
普通列車○○方面行きは、…」
○○駅に特急列車待ち合わせのため…。今しばらく…
○○駅を○分遅れで発車しております。今しばらく…
こんなアナウンスに、怒りともとれる溜息が聞かれるようになって、ようやく、
「…大変ご迷惑をおかけしております。
 普通列車○○方面行きは、○○分遅れで○番ホームに到着いたします。
 お待ちのお客様は、お足もとに十分ご注意…」
と、いよいよ電車がホームに入ってきました。
安堵の溜息が洩れ、列の人々が息を吹き返したかのように
にわかに活気づき、明るい車内へと乗り込んでいきました。

待ち時間は30分以上は軽くあったはずです。
この日、風邪をひいた人もあったでしょう。

長い間、電車を利用していましたが、
これほど辛い経験は、多くはありません。
気づいたら、もう、遠い記憶になっていることに
驚きを感じます。