呼吸のように・・・

俳句のエッセー

落栗

裏通りを入ると、やがて一面の刈田になる。
その端の農家に栗の木が一本あって、
それがとても立派な木で、この時期になると、
たくさんの栗が辺りに転がっているのだ。
だからといって、別に拾いに行くとかいう話ではなくて、
落栗が風にとばされて、刈田に散乱しているという話である。

刈田には、籾殻の山が所々に出来ている。
その籾殻まで飛ばされて、栗はぬくぬくと
その中に留まっていた。
温かそうだ…

栗は、一冬砂に埋めておくと甘みを増すということを
聞いたことがある。
なんとなく、そこに転がっている栗は、
甘くて、美味しそうに見えた。
一方で、いきもののようにも思え、愛おしく思えた。

この木の持ち主は、栗を拾わないのだろうか?
いや、拾えないのだろうか?
嫌いなのかも知れない。
いや、十分すぎるほど取っても、まだ成っているのかも知れない。
いろいろ考えながら、
今日も通り過ぎていく私だった。