呼吸のように・・・

俳句のエッセー

穭田(ひつじだ)

稲刈りが終わったにもかかわらず、田が青々としている。
これは穭で、実をつけているものまであるのだ。
そこに、下校の小学生、おそらく1年生4、5人が、
穭田に向かって立っていた。
まだ新しいランドセルが、横一列に並んでいる。
端にいた男の子が、傘を持ちだして、田を突いているようだった。

何やら同じような光景を見たことがある。
そうだ、先日、私が同じようなことをしたのだった。
土手にみすぼらしい芒があって、葉に雨蛙が乗っていた。
雨蛙は保護色で、この場合、緑でなければならないはずなのに、
なぜか金色をしていた。夕日を映していたのかもしれない。
その金色の蛙を、芒の穂で払ってみた。
じっと耐えていられなくて、蛙は口を開けて抵抗した。
それでも、うりうりからかっていると、
「イヤだってば!」と穂に噛みつくようなしぐさをする。
涼しくなってきたこの頃、蛙はとても鈍い。
蛙はいよいよ地面に落ちて、私も飽きてしまったというわけである。

ランドセルの子供たちは、傘の先を凝視していた。
「ほら、やっぱり・・・」
やはり、何かいるらしい。
傘を操っていた男の子は、ランドセルを友達に預け、
ついに上着を脱ぎだした。
傘の先にあるのは何か、それはわからないけれども、
その遊びに飽きるまで、もうしばらく
時間がかかるだろうと思った。