呼吸のように・・・

俳句のエッセー

死して後已む

「已後而死」

死して後已む(ししてのちやむ)

桂小五郎が、机に刻み込んだ文字です。

その気迫を思い、記憶に留めていました。

 

礼拝に於いて、祈りに於いて、

人は、その不信仰を思い知らされます。

神に頼り一途に生きてきても、

ときに主は、悪魔の酷い申し出をおゆるしになります。

人は苦しみ、ある者は死に至る、

何故、神は、このようなことをおゆるしになるのか、

この疑問は、抑えれば抑えるほど、強く意識の底に残ることでしょう。

助けてください、と祈ります。

しかし、助けなど来るはずがないと思っています。

救いも、愛も、奇跡も、望んでも与えられないと、

心は嘲笑しています。

神のたすけなどない、それが本音かもしれません。

救いはある、必ず来る、

そう思えば思うほど、心は離れていくようです。

祈りは戦い。

私たちの戦いは、命が途切れる時まで続きます。

罪との戦いは、悪との戦いは、

自分自身との戦いは、肉体を持つ間、ずっと続きます。

この世の営みから、人は逃れることはできません。

その間、絶えず変化し、巨大化する難題に晒され続けるのでしょう。

「死して後已む」

私たちの肉なる戦いは、死ぬまで続きます。

「已後而死」

いつか終わりが来ると思えば、戦えます。

主にあって、死は死ではないと思うからこそ戦える、

それがキリスト者の希望です。

 

淑気

新年の季語、「淑気」。

年が改まり、厳かな空気に満ちていることをいいます。

ちょうど、寒さの厳しい頃であり、

身の引き締まる思いがする、新年の雰囲気を思ってください。

日本人であれば、誰もがこの空気を感じることができるでしょう。

森羅万象、改まった感じがします。

とても新鮮な空気に満ちています。

そして、新年を祝う思いが込められた季語です。

明日は聖日です。

季語には「初弥撒」はありますが、「初礼拝」はありません。

ただ、「初」を以て新年としています。

しかし、初礼拝は六文字になり、語呂がよくないのは確かです。

使い方が難しくなります。

それでは、礼拝の雰囲気をうまく取り入れて、

「淑気」をもってくれば、上手くまとまるのではないかと考えます。

カトリックは装飾が多く、比較的俳句になりやすいですが、

プロテスタントは難しいでしょう。

さまざまに挑戦し、一句でもいい句ができるように、

練り上げていきたいものです。

軍歌

父は、今思えば声のいい人で、晩年まで音程はしっかりしていた。

歌手になりたかったと聞いたことがあり、軽薄な人間だと思っていたのだが、

実は、音楽大学へ進学するための、特別な訓練を受けていたことを

随分、後になってから知った。

結局、受験しなかったようだし、受験しても合格したかどうかわからないので、

なんともいえないのだが、確かに楽譜を読み、オルガンも弾いていた。

さて、その父が、私の前で軍歌を歌い、母に叱られたことがあった。

その軍歌は、テレビでよく耳にするような

「同期の桜」や「予科練」といったものではなく、

リズミカルで明るい旋律という印象だった。

最近になり、それが「抜刀隊」であることが分かった。

最後の「進むべし」の「べし」が、「べーし」と、

ちょっと特徴的な節回しだったことを覚えていて、

これによって「抜刀隊」と分かった次第である。

「抜刀隊」は、「陸軍分裂行進曲」で知られている。

「陸軍分裂行進曲」が分からない人は、

かつての大戦下、学徒出陣で演奏された曲だと言えばわかるかと思う。

「陸軍分裂行進曲」は、フランス人、シャルル・ルルーによって作曲された。

シャルルは音楽兵で、明治期、日本陸軍音楽隊の指導のため日本へ来ており、

この行進曲を残して、彼はフランスへ帰っていった。

彼の弟子である永井建子が、あの「歩兵の本領」を作曲している。

「抜刀隊」は、「陸軍分裂行進曲」に歌詞を付けたものだと、

ずっとそう思っていた。が、実は軍歌「抜刀隊」が、

「陸軍分裂行進曲」に先行していたと、最近になって初めて知った。

「抜刀隊」と、シャルル・ルルー作曲「扶桑歌」とを併せて、

編曲されたものだったそうだ。

父が歌っていた「べーし」が、先行して陸軍分裂行進曲ができた。

その曲によって出陣した学徒兵の悲劇は、語るに及ばず、

まさか、この行進曲によって出て行った日本軍が、

これほどまでにボロ負けしようとは、シャルルも思わなかっただろう。

父は、志願兵になろうとしていたところで、終戦を迎えた。

父の兄は、海軍に属し、サイパンで戦死した。

真っ白な軍服を着て、それは恐かったと父は話していた。

名前を呼ばれると、ピリッと背筋が伸びたと言っていた。

 サイパンへ赴く前、その兄は父を訪ね、

一緒に喫茶店でホットケーキを食べたそうだ。 

英文法ががっちり頭に入っていた人だったと話していたが、

その兄の名前の入った辞書を、父は最後まで大切にしていた。

今になって、父の悲しみが分かり、残念でならない。

ときどき、父の歌った「抜刀隊」を思い出す。

明るい声で、高らかに歌っていた。

高度成長期と言われたころの話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

初暦

カレンダーをいただきました。

いつものクリスマスのプレゼント交換です。

私は日本の暦を、彼女は、スウェーデンの暦を、

そして、お互いの日々を思います。

もう15年ですね。

あっという間だったそうです。

 

暦を見ていて気付きます。

一日一日に聖人の名前が書かれています。

バレンタインデーが有名ですが、

そのような名前が、すべてに入っているわけです。

知識では知っていましたが、目にすると実感できます。

このように毎日、誰それの日、ということがあり、

それぞれに謂れがあるのでしょう。

「今日は何の日」

といった感じでしょうか。

ちなみに3日は、Alfredと書かれています。

まるで分かりません。

ただ、わかるのは、

毎月きれいな植物の絵が入っていて、

一月は、コナラか椎の種類だと思います。

お花と実とが描かれています。

つまり、ドングリです。

花は、かんざしの装飾のような、地味な花ですが、

春先には見ることができます。

土地が違っても、植物が同じなんて嬉しいですね。

素敵な初暦。

いよいよ今年も始まりました。