呼吸のように・・・

俳句のエッセー

船虫

船虫、舟虫は、夏の季語です。
うっかりと、季語であることを忘れていました。
失敗です。
船虫は、人の影に敏感に反応し、群れだって動き出します。
その気配に、私も初めて船虫の存在に気づき、
その数の多さに驚くのでした。
岩が動いたのかと思うほど、船虫は一度に散ります。
あまり気持ちの良くない姿で、こちらの足が退きます。
佇むと這い登って来るのではと、おびえたりもします。
夕方、浜風に佇んでいると、
気が付けば、人がたくさんになっていました。
誰もが同じように、風に吹かれて、海を眺めていました。
深い海が鳴り、波が飛沫となって散るのを眺めながら、
何に思いを馳せているのでしょう。
有磯海は静かに暮れてゆきました。