呼吸のように・・・

俳句のエッセー

骨清窟

西田幾多郎記念哲学館は、丘の上にあります。
風がよく通り、今頃は、若葉が騒ぎ通しでしょう。
雉も鳴く、自然の雄大な時に身をゆだねるのも、
心と体の健康にはいいと思います。
春には霞がかかり、桜が咲き、実がなり、
やがて葉桜に雨が滴るようになり、
大空には白雲が湧く夏がきて、
秋は桜紅葉がいち早く色づき…
骨清窟の四季は、どれも美しく、心に響きます。
それでも、骨清窟には、今頃の季節が最も似合うと思います。
幾多郎は、ここで思索の時を持ちました。
ここから充実した作物を世に送り出しました。
骨清窟は、ここを訪れる者にも、充実した時を与えてくれるでしょうか。
それは、訪れる者次第でしょう。
骨清窟の向かって右側の入り口には、
幾多郎の三女、静子さんが残した骨清窟の絵が印刷されています。
緑を基調とした絵は、窓が開けられ、さわやかな風が感じられます。
机には本があり、花がおかれ、棚の上に黒猫が描かれていますが、
本物でしょうか?ぬいぐるみでしょうか?
想像を膨らませて、部屋の中をのぞくと、
すべてが褐色を帯びていて、机の上は、何も乗っていませんでした。
一瞬、心を、風が通ったような気がしました。