呼吸のように・・・

俳句のエッセー

雪代

金沢城下は、大火の傷を持つ町である。
それによって用水が発達し、それは今でも残っている。
辰巳用水である。
雪解けの季節を迎え、城址の用水の流れは激しく、
白いしぶきを上げて落ち行き、また、曲がり行く。

長い間、教会に尽くされた長老が帰天された。
ご夫婦で長老職を担い、奥様が司式をなさった日曜日、
その時、ご主人は天に召された。
長い闘病生活だったそうで、それでも最期は、
あまりに急な訪れだったとお話された。
そのような状態の中で司式され、しかも
皆のために、心からの祈りをささげられて、
静かに講壇を後にされた姿を、私は忘れないと思う。

キリスト者の奥深い強さを知った出来事だった。
故人の愛唱讃美歌、「見よや十字架の旗高し」。
私は、長老が、イエス・キリストの先導のもと
勇んで天の国へ入っていかれた姿を見たように思った。
私たちにとって、死は終わりではない。
永遠に至る「死」である。
兄弟姉妹と共に、希望をもって長老をお送りした。
浅春の青空には、雲がたなびき、
まだ固い桜の枝が、天を差して伸びようとしていた。
信仰に生きた長老の志が、教会に継がれていることを
一同が信じている。