雪嶺の冷たさいつも桜の上 細見 綾子
句集『伎芸天』より。
今日は、天気予報に反して、午後からの雨は降らず、
花見日和でした。
桜並木は、川の両岸に伸び、
桜の向こうは雪の山が見えていました。
桜の宴の席で、吟行が始まり、
桜の向こうの雪山を詠もうと、だれかれと苦心しています。
雪は冬の季語、桜は春の季語とあって、
季重なりを心配するのですが、
掲句のように、そのままを句になさっていいのです。
ただ、上手く詠まないと、
ごちゃごちゃしてしまいますので、要注意。
難しいところです。
「雪嶺」と、そのまま詠みあげたあと、
「冷たさ」と詠います。
確かに高い山の上は寒いのでしょうが、
下界でそれを感じることはありません。
その冷たさを身近なものとして感じ、さらに
「いつも桜の上」と詠みあげました。
正直にその通りですが、
そのとおり、そのままを詠むのは、簡単ではありません。
今日見た景色は、掲句の通りでしたが、
「雪を頂く」「遠山」「遠嶺」
そして、
「山裾が桜に烟るようだ」とか、ひねりを利かせて失敗していました。
正直になるとは、難しいことです。
綾子先生に学ぶことの多い孫弟子です。