卯波

  返しては卯波の鳴らす蜆がら   田島 和生

『かんさいの風』より。
卯波は、陰暦四月ごろの波のことです。
岸に蜆の殻が流れ着き、波に寄せられては砂に留まり、
また、寄せる波にもまれ、形を変えて砂に留まります。
繰り返し、繰り返し、寄せる波の形を砂に留め、
蜆の殻は、汀に鳴り続けるのでしょう。
卯波という季語によって、輝く湖が見えるようです。
波の音ではなく、貝殻の、しかも蜆の殻の音を発見したのは、
作者の優れた観察眼でしょう。
大湖を前にして、繊細な感性が光る一句です。