2017-04-05 卯波 返しては卯波の鳴らす蜆がら 田島 和生『かんさいの風』より。 卯波は、陰暦四月ごろの波のことです。 岸に蜆の殻が流れ着き、波に寄せられては砂に留まり、 また、寄せる波にもまれ、形を変えて砂に留まります。 繰り返し、繰り返し、寄せる波の形を砂に留め、 蜆の殻は、汀に鳴り続けるのでしょう。 卯波という季語によって、輝く湖が見えるようです。 波の音ではなく、貝殻の、しかも蜆の殻の音を発見したのは、 作者の優れた観察眼でしょう。 大湖を前にして、繊細な感性が光る一句です。