呼吸のように・・・

俳句のエッセー

冬芽

 仁徳といふそら豆の冬芽濃し   田島 和生

そら豆の冬芽、しかも仁徳とは、天皇の名前です。
いかにも雅な風体を思い浮べるそら豆の冬芽です。
その冬芽が、一際、色濃く感じられました。
おそらく、畑にある色の濃い冬芽に惹かれ、
近寄ったところ、「仁徳そら豆」であることを知ったのでしょう。
なるほど、と思えたその名に、俳句が生まれました。
「仁徳といふそら豆」
それだけで感動が分かる、不思議な俳句です。
俳句とは、身近なところから生まれます。
繊細な思いと観察眼によっていい句ができるのであり、
特別な何かを詠まねばならない、ということはないのです。
そのお手本の様な俳句。
掲句に、俳句への姿勢を正した次第です。