呼吸のように・・・

俳句のエッセー

金縷梅

 金縷梅の咲くや薬鑵の笛高し   田島 和生

金縷梅の咲くころ、なんとなくもやもやした思いがします。
春の訪れは、別れであり、出会いであり、
希望であり、不安であるという、
定まらない思いを抱く季節だからと言えるかもしれません。
春は霞。
夜は、朧。
いずれもぼんやりとした空模様、空気の漂うころと相まって、
この俳句が誕生したのだと思いました。
金縷梅が咲き、咲き満ちてもぼんやりと空気に黄色がにじむようで、
そんな愁いともとれる思いのなか、
薬鑵の笛が、高い音を立てます。
その笛の音が、春の愁いを吹き飛ばすようであり、
更に愁いを募らせるようでもあり、
やはり、どんよりとした空気に押しつぶされそうな作者なのでしょう。
アンニュイと若者は語ります。
アンニュイとは、この句の本質ではないでしょうか。