呼吸のように・・・

俳句のエッセー

春雷

  春雷や胸を輪切にして撮らる   田島 和生
思い出します。
始めてCTが登場したころ、ある講演会での出来事です。
講演者が、
「頭を玉ねぎ状にスライスして写真を撮るのです。
 皆さん、医学は、ここまで進歩しているのですよ!」
その言葉に、
「ええ〜〜〜!!!」
と、異常に驚いていた姉は、
本当に頭をスライスしてしまうと勘違いしたようでした。
そんなことをして、人は死なないのか、などと思った姉の
貧困な想像力と理解力に、驚きを感じます。
掲句は、その画像を見せられているときではなかったでしょうか。
それだけでも、病の危うさを思いますが、
「春雷」という季語により、思いがけない歪が、
遠くからひたひたと近づいてくる感を思わせます。
戸惑う作者の心中を思わせます。