呼吸のように・・・

俳句のエッセー

墨書

日本霊異記」をご存知でしょうか。

全部を読んだわけではありませんが、ある考古学の講習会で、

参考資料として紹介された内容が面白くて、

読んでみたいと思ったのが、これを知った最初でした。

墨書のある須恵器が出土しました。

みると、○○太郎兵衛というような、名前が多いことが解りました。

なぜ名前なのでしょうか。

たとえば、我が家の茶碗に、家族の名前が書いてあるような、

そんな感じなのでしょうか。

その答えが、「日本霊異記」のなかに見られるというのでした。

物語の内容(うろ覚えですみません)

ある日、ある男のところへ死神がやって来ます。

お前はだれか。

死神である、今日、お前を迎えに来た。

男は死神を説得します。

今、私が連れていかれると、妻が、子が、親が、と男は必死に願います。

死神は耳を傾け、

「分かった。それでは、その辺で、お前と年恰好の似た者を代わりに連れて行くことにしよう」と言い、

そして、去り際に、

「わたしは、何々の〇〇兵衛であるぞよ」

と告げます。これが、重要なポイントです。

この名前の意味は、自分をお祀りしなさいよ、という意味で、

これが、墨書の謎を解くヒントです。

中世、食器にその名を書いて、供えの食べ物を盛り、

家の片隅にお祀りするということがなされていたようです。

それで、名前の書かれた須恵器が遺った、と言うわけです。

実に乱暴な面白い話で、身代わりになった男は誰になったのか、

誰もが知りたくなるところです。

神保町の古本屋に、遺跡の報告書を探して歩いていたときのこと、

この日本霊異記が積まれていたのを発見しました。

思わず心が惹かれましたが、目的のものではなかったので素通りしました。

時々、思い出して、値段ぐらい見ても良かったかな、と思ったりします。

結局、目的の報告書は、3万以上の高値で手が出ず、

コピーで我慢することにしました。

晩夏、とても暑い日だったように記憶しています。