呼吸のように・・・

俳句のエッセー

夏みかん

おつむ撫でびんづる様へ夏みかん   田島 和生

 

びんづる様は、寺の御堂の前におわし、

その顔は福福として微笑んで、てらてらと艶めいています。

それもそのはずで、

自分のからだの悪いところは、

賓頭盧さんの同じところをなでると治る、といわれており、

鼻の悪い人は鼻を、目の悪い人は目を、

頭の悪い人は頭をなでるからにほかなりません。

顔の悪い人も、顔をなでるかもしれません。

作者は、「おつむを撫で」た、といいます。

おつむ、すなわち、頭ですから、

やはり、頭が良くなりますようにと

賓頭盧さまの頭を撫でたのでしょう。

そして、夏みかんをお供えしました。

ご丁寧に、賓頭盧さんに願いを聞いていただこうと、

おつむを撫でただけでは飽き足らず、

旬で、大きな夏みかんをお供えしたようです。

入念な祈りに、思わず笑ってしまう滑稽さがあります。

「びんづる様、どうか一つ、頭を良くしてやってください」

この願いは、いくつになっても同じなだけに、

共感と笑いを読む者に与えてくれます。