呼吸のように・・・

俳句のエッセー

春の月夜

熊笹に虫とぶ春の月夜かな   前田普羅

前田普羅。
なぜか、普羅の俳句に目を留めてしまうのは、
やはり、同じ土地に住んでいるからでしょうか。
ちょっとした庭園、山の道に艶めく熊笹
熊笹は、春の雨に艶めき、春の雪に音を立て、
いつも身近に見ることができます。
その熊笹に虫が飛んでいます。
啓蟄より、虫が活発に飛び回るようになります。
大きな虫ではなく、小さな陽炎のような虫です。
その虫が、月の光に影となって飛んだというのでしょう。
春の月夜、ときにはっきりとした明りの月に、
熊笹を飛ぶ虫の影が、明らかに見えました。
春の月に、意外なほどはっきりした虫影に驚く作者を思います。
熊笹というはっきりした物を置くことで、
俳句が締まり、類なきものとしました。
ちょっとしたことで、俳句はがらりと変わるものです。