呼吸のように・・・

俳句のエッセー

春光

春光や礁あらはに海揺るゝ   前田普羅

(しゅんこうや いくりあらわに うみゆるる) (まえだ ふら)

 

前田普羅です。

こちらは日本海でしょう。

「礁あらはに海揺るゝ」とは、恐れ入りました。

まず、「礁」が読めませんでした。

これは辞書で「いくり」と引けば、「海石」と出てきます。

「かくれいわ」という意味です。

掲句、かくれ岩が露わになっている、つまり、

波が高いのでしょう。

しかし、季語は春光ですので、季節は春です。

「晴天なれども波高し」といったところでしょうか。

春の日差しの中、荒ぶる波は輝く飛沫をあげており、

普段は海中に沈んで見えない岩も、露わになっていると言います。

その様子を目にして、「海が揺れる」と詠みあげた、

その感性と表現力は、到底、真似できません。

日本海側、富山の地で、

俳句の荒波にもまれた作者の、

洗練された一句です。