呼吸のように・・・

俳句のエッセー

初鴨

借景の湖へ初鴨滑り出づ   田島 和生

 

季語「初鴨」、冬。

借景の湖というのですから、

ここは、ご自宅かどなたかのお宅の窓、

あるいは縁側からの景色でしょうか。

広々とした湖は、建物の枠によって

一枚の絵画のように見えていたかもしれません。

その画面の中に、不意に鳥が滑り出てきました。

見ると鴨です。

初鴨、つまり初めて見る鴨ですから、

作者の目に新鮮に映り、

冬の到来を思ったというのでしょう。

いよいよ鴨が渡って来たか・・・

「滑り出づ」という写生が具体的で、

心情的に訴える力もあります。

眼前に滑り出てきた鴨は、

心にも滑り込んできた、という衝撃を思いました。