呼吸のように・・・

俳句のエッセー

金子兜太先生を悼む

 水脈の果炎天の墓碑を置きて去る   兜太
金子兜太先生が、2月20日に天に召されました。
兜太先生の俳句は、正直なところ、よく分からないと思っていました。
ただ、上記の俳句は、戦争経験から作られたことがすぐに伝わり、
強く心に迫って来た一句でした。
トラック島での経験が、後に、この句を生み出したと聞きました。
南太平洋の水脈。
帰国の船の水脈。
自身は帰国の途につき、戦友たちは残された。
彼等は屍となり、石の下に眠っている。
無念の思いが、この一句に込められています。
悲しいとは言わない、墓とも言わない、
その省略の表現法をとる俳句だからこそ、強烈に伝わる事実。
兜太先生と共に、私の中で生き続ける俳句です。
許されるならば、このような俳句を詠んでみたい、
心より願います。
有難うございました。