呼吸のように・・・

俳句のエッセー

明王の眼玉

明王の眼玉ぴかり春の闇   田島 和生

明王というと、私は、倶利伽羅不動明王を思い浮かべます。
このように霊験あらたかな古い仏像等は、煤けて色は落ちてしまい、
目ばかりがぎょろりと目立つ、そのような面持ちではないでしょうか。
「眼玉ぴかり」と面白く表現されていますが、
「めんたま」と読むのでしょう。
「ぴかり」も「光る」とは言わず、光った様を「ぴかり」と表現されていて、
明王様も茶化されて「これは参った」という雰囲気のように思います。
一方で、的確に明王の表情を伝えており、「春の闇」がしっかりと収まっています。
明王を身近にとらえている一句ではないでしょうか。
いつも詣でている明王様に、この春も拝みにきましたよ、と
親しみを込めて話しかけているようにも思えます。