呼吸のように・・・

俳句のエッセー

無言館

 自画像の眼に見返され冴返る   田島 和生

「信州・戦没画学生美術館」と前書されています。
正式には
「戦没画学生慰霊美術館 無言館
その中に、自画像があったのでしょう。
つまり、戦地へ赴いた本人の顔です。
その自画像の眼は、おそらく強い印象だったのでしょう。
その眼に見つめられて、一瞬、ひるんだ作者があります。
見つめていたはずなのに、いつしかその眼に捉えられている、
そんな思いに、心を貫くような感情が走ったのではないでしょうか。
なぜ、私は戦地へ赴かねばならなかったのか。
なぜ、私は、夢や希望を捨てなければなかったのか。
なぜ、私は死なねばならなかったのか。
そのような問いかけが聞こえてきたのでしょう。
答えのない、その問いかけに、
ただ沈黙するしかない、作者の姿がそこにあるのです。