呼吸のように・・・

俳句のエッセー

みんみん

  みんみんの千年杉に声絞る   田島 和生
みんみんとは、みんみん蟬のこと。
梅雨明から、まず、暑さを煽るような声で鳴くのが、油蝉。
盛夏を過ぎたあたりから勢力を拡大する、みんみん蟬。
私の季節感では、このような順序です。
クマゼミの最北は、今は、神奈川あたりと記憶しています。
こちらにはクマゼミは生息していませんので、
上記のような感覚で受け止めているわけです。
さて、
みんみん蟬が、声を絞って鳴いていると言います。
短い蝉の一生を、千年杉で鳴いている哀れを思います。
その哀れを思う作者の耳に、
みんみんは、声を絞って鳴き続けるのでしょう。
唸るように、みーんみーんと鳴く響きを、
千年杉が受け止めています。
どれだけの蝉が、この杉を頼みに鳴いて来たでしょうか。
今、鳴いているみんみんにも、立ち続ける杉にも、
聞いている私たちにも、知るよしもないことです。