呼吸のように・・・

俳句のエッセー

滝壺

  滝壺を滝割る如くとどろけり   田島 和生

自然に対峙するとき、おしゃべりする人は、あまりないでしょう。
耳を澄まし、深呼吸して、じっと見つめる…
そのように自然の中に入り込むのだと思います。
しかし、ときには誰かと感動を分かち合いたいもの。
ふいに話しかけて、おっと思うのは、
何を言っているのかわからない、ということです。
滝の場合、話してわかるのは
その轟音の程度です。
「えー?」などと聞き返すことしばしば。
その轟音を捉えた一句です。
自然の水が大量に落ちてくる滝。
真っ白なしぶきが、勢い強く飛び散って、滝つぼへなだれて行きます。
その勢いを「滝壺を割る如く」と表し、「とどろけり」と言い切っています。
この表現が、また、滝の勢いを伝えているようです。
雄々しい滝を伝える、言葉に隙のない作品です。