呼吸のように・・・

俳句のエッセー

内藤先生を悼む

かつて金沢教会を20年牧会なさった内藤先生が
金曜日天に召されました。
思い出すのは、まだ、学生だった頃、
先生が牧師としての経験をお話になったことです。
ある夜、男性が教会を訪ねてきて、
「私は、事業に失敗し、仕事もお金も、何もかも失いました。
 私はこれから死のうと思います。
 そう思って歩いていて、教会が見えたので、
 死ぬ前にと思って立ち寄りました。」
このようなことを牧師に話し始めたそうです。
「私は話が長くて」
内藤牧師は、そのように自分のことを言い、
「妻によく叱られます。
 もっと、信徒さんの話を聞かないといけないと。」
その時も、話が長くならないように注意しながら、
彼の話を聞かなければと思って、質問をしたと言います。
「何もかも失ったそうですが、持っているものはないのですか?」
そう内藤牧師が尋ねると、男性はポケットに手を入れて、
「ここに180円あります。」
つまらないことだと言うように、お金を掌にのせて見せました。
それだけかと尋ねると、また、
「服を着ています」と言い、そして、
「家が、あります」
そう言うと、少し間をおいて、
「…妻と子供が二人。」
男性は、思い立ったように顔を変えて、
「家に帰ります」
そう言って、静かに礼を言い、帰って行ったそうです。
内藤先生にとっても、忘れられない出来事だったことでしょう。
伝道者として一生を終えられ、
今は神さまのもとで、安んじておられることでしょう。
お疲れさまでした。そして、
有難うございました。
私たちは、先生を忘れません。

神さま…