呼吸のように・・・

俳句のエッセー

白障子

お正月も三日を過ぎると、平穏な時間が戻る。
奥宮に初詣の人出がなくなると、全く神の域となったように
人の気配は失せていた。
蕎麦で有名な一揆の村も、新蕎麦の頃とは打って変わって、
閑散としたお店の灯が、ぽつりと見えるのみである。
休日の夕方、ほとんどが営業を終えたなかで、
老舗が店舗を開けていた。
俄に一揆そばが食べたくなり、店内へ入ると、客は私たちだけだった。
お店は、若い夫婦が切り盛りしていた。
一揆そばを注文して、しばらくすると、
辺りは暗くなり、時報代りの音楽が鳴り出した。
それを待っていたかのように、店主の妻は、窓の障子を閉めて回った。
それまでの、窓の闇に代り、
真っ白な障子がまぶしく感じた。
新蕎麦のころは気づかなかったが、とても清潔で、
すみずみに気遣いが見られた。
自動ドアではない扉を、錘を使って自動で締まる工夫。
壁に飾られた餅花、蹲、凧。
さりげない新年の装飾が嬉しかった。
三が日は、どれだけの人出だったのだろうか。
若い夫婦は、時節にかかわらず、客をもてなしてくれるのだろう。
日脚が伸びる頃、この障子に光が映えるころ、
また、訪ねたいと思った。