呼吸のように・・・

俳句のエッセー

稲の花

  北行きの列車短し稲の花   山本 洋子
「シリーズ自句自解Ⅰ ベスト100 山本 洋子」より。
北行き」という言葉に新鮮さを抱きました。
地名ではなく、方向を伝えた「北行き」。
そして、それは電車ではなく「列車」。
また、一両電車、二両電車と具体的に言わず、「短し」と表します。
北行き」「短し」「稲の花」、
さりげなく、調べよく詠われている17文字に、厳選された言葉が並びます。
自解を読んでみましょう。

「この列車は北行きでっか」急いで乗り込んできた媼はそう聞いた。
「ええ、そうですよ」と応えながら、耳慣れない「北行き」という言葉が、
この辺では当たり前につかわれていることに一寸びっくりしていた。
列車が、ゆっくりと北に向かってはしりだすと稲の花が咲く
匂いとまぶしい光が窓からはいってきた。(『稲の花』平成9年)