呼吸のように・・・

俳句のエッセー

まつさらの花

  まつさらの花あげて朴ゆるぎなし   田島 和生

「まつさら」(真っ新)の表現が光ります。
朴の花は、遠目にもそれとわかるほどの大きさと白さを持ちます。
山の斜面に、耀くばかりに美しい朴は、真っ新な白さです。
色を言わず、「まつさら」としたところが、
読者に想像する幅を与え、句の世界を広げています。
そして、「ゆるぎなし」の一言により、
咲き初めの大輪を思います。
朴の花も、花びらが開き切って蘂が立つと、
また、印象が変わります。
これは、咲初めの朴の花。
その清々しさを詠っています。
自然そのものを詠うのは、容易ではありませんが、
自分が受けた印象を、感情的にならずに表現することで、
むしろ強い印象を与える、
そのことを証しするかのような一句です。