呼吸のように・・・

俳句のエッセー

風鈴や

  風鈴や奥へ奥へと竹の幹   秋篠 光広

幻想的な俳句に思いました。
竹取物語のような不思議の世界へ連れて行かれそうです。
風鈴の音を訪ねていくのか、
風鈴から遠ざかってゆくのか、わかりません。
ただ、竹の幹は、ゆく手に次々と撓い傾いていて、視界を遮るのです。
一本ずつ掻き分けるように進む、それは、確かに
「奥へ奥へと」であり、林立する竹を言っています。
竹藪を進む心は、とこまでも続く竹の中をゆくのです。
ふと、また風鈴が鳴りました。
我に返ったように見渡すと、
そこは風鈴のつられた座敷、だったかもしれません。
奥へ奥へと竹の幹
読者を誘い込む一句です。