呼吸のように・・・

俳句のエッセー

日の永し

  鉛筆を削り揃へて日の永し   田島 和生

鉛筆を削って、二本、三本、あるいは五本、六本、
おそらくほとんど長さの同じの鉛筆が、揃えて置かれたのでしょう。
さて、これから執筆開始。
「日の永し」という季語から、筆者は夜型…ではなく、
まだまだ仕事ができそうだ、と言っているように思います。
鉛筆を使うとは、古臭くて、非現実的、と思わないでしょうか。
実は、作者は、元新聞記者。

 涼しさに百の鉛筆削らむや (昭和58)

この句の自註には、
「原稿は3B鉛筆を使い、ザラ紙一枚に一行(十五字位)ずつ。
 涼しい日は「頑張るぞ」と気力も。」
と、掲句に通じる思いがつづられていました。
日が永くなり、気力が湧いているのでしょう。
現役時代をそのままに仕事に向かう作者の思いが、
俳句となったのだと思いました。