呼吸のように・・・

俳句のエッセー

初音

  老僧へ閻魔へ初音惜しみなく   田島 和生

お寺に祀られている閻魔大王
それは、おそらくおどろおどろしい形相でしょう。
そして、年老いた住職は、修行を積んだ平常心そのもののお顔。
相反する二つの者が対峙したその時、
見事な鶯の鳴き声が届きました。
「惜しみなく」、鶯は、朗々と鳴き上げたのでしょう。
降る雪のように、鶯もまた、分け隔てなく
どのような者にも最善の声を聴かせてくれるのです。
この不思議を思い、すかさず俳句に書き留めました。
深い教訓を含んでいるともいえる、味わい深い一句でしょう。