呼吸のように・・・

俳句のエッセー

落椿

  滝の上(へ)に一つは懸かり落椿   田島 和生

滝の水は、とぎれなく落ちてきます。
ゆっくりと流れてきた水が、急激に落ちて来る落差の不思議を
飽きずに眺めています。
平坦な水が、怒涛の変化をするその所に、
椿の花が、引っかかっています。
赤い花と想像します。
「一つは」とありますので、ほかにもいくつかの椿が流れてきては、
滝つぼに落ちて行ったのでしょう。
流れゆく時を、とどめたかのように、
一つの落椿が、滝の上に残っています。
不思議と胸にのこる、一場面ではないでしょうか。
その場面を、見事にとらえています。