呼吸のように・・・

俳句のエッセー

冷やか

「冷やか」「冷ゆ」「下冷え」「朝冷え」「夕冷え」
秋の季語です。
秋が深まってきて、涼しさから冷やかさへ変わっていきます。
気温が低くなっていくことが、気持ちよく感じていた後の気配でしょう。
肌に寒さを感じるころです。

  冷やかに真鯉の黒目山瀬かな   田島 和生
掲句は、山の浅い流れに、黒い真鯉が黒目を光らせているようです。
水が冷たくなってきて、真鯉の動きも鈍くなります。
大抵は、人の気配に敏感で、水中を飛ぶように姿を消す鯉ですが、
冷やかさにぼんやりとしていたのでしょうか。
黒い胴体に黒い眼が、紛れず、水中に見えています。
山瀬ということばにより、鯉の泳いでいる空間が想像でき、
彩豊かな山の空気までも感じることができる
素晴らしい作品でしょう。